RoHS 対応と最近の環境問題

1. RoHS 対応

RoHSが規制する、下記の物質については、 対応を完了しています。

使用制限物質閾値
鉛 (lead)1000ppm 以下
水銀 (mercury)1000ppm 以下
6価クロム (hexavalent chromum)1000ppm 以下
PBB (polybrominated biphenyls)1000ppm 以下
PBDE (polybrominated diphenyl ethers)1000ppm 以下
カドミウム (cadmium)100ppm 以下

電線の場合、カドミウムへの対応は古くから行われていますので、 PVC コンパウンドの鉛系安定剤対策と難燃剤の Deca-BDE 対策 だけになります。 DecaBDE は 10 年間の研究と調査の結果、 使用を禁止する理由がみあたらないという理由により、 使用可能になりました(2005-10-15 公告 - Octa-BDE も同様)が、 2008-04-01 に除外決定の手続き不備があったとして、 2008-07-01 以降は禁止に戻りました。 安全データそのものが否定されたわけではありませんから、 今後また復活する可能性があります。 EU に於ける DecaBDE のリスクアセスメントでは 2008-06 にリスク削減評価不要の結論 がでていて、REACH 登録は容易に行われそうですが、RoHS と矛盾することなって、手続 問題による禁止という状態は考え直すしかないように思えます。 これ以外の臭素系難燃剤はすでに何年も前から生産中止になっていて、 新しい製品に使われる可能性はありません。

2. RoHS 指定物質の分析データ

RoHS 指定物質の分析データを要求されるお客様への対応は、 次のとおりです。

  1. EDX(蛍光X線分析)と FTIR(赤外分光光度計)による分析は(社内で)無料で行います
  2. AAS/ICP/ICP-MS、ガスクロマトグラフ等の分析は有償になります (1 試料 1 万円前後と手数料 5 千円程度)

3. ELV 対応

ELVの使用制限物質と閾値は、下記のとおりですが、 これはRoHSの部分集合になりますので、 対応済みです。

使用制限物質閾値
1000ppm 以下
水銀1000ppm 以下
カドミウム100ppm 以下
6価クロム1000ppm 以下

4. 非塩ビ(ノン・ハロゲン)化

最近、RoHS 規制物質の調査とともに、 S, Nさん他の系列メーカー様から、 非塩ビ対応をご質問いただくケースが多く、 私たちも「塩素を含まない電線」の開発と販売をしてはいるのですが、 この数年の調査と研究の結果としては、下記の理由で、 非塩ビ化が、かえって環境に悪影響を与える可能性が高い ことがわかってきて、 一部の人々の短絡的感情的な扇動に便乗する、 (売れれば良いという)「エコ」商法は危険と判断しています。

まず、過去に提起された、「PVC」(塩ビ)の環境問題は、次のとおりです。

  1. 燃焼時のダイオキシン発生の可能性
  2. 可塑剤や安定剤等、添加物の内分泌撹乱性と毒性

このうち、燃焼時のダイオキシン発生については、 燃すものが問題ではなくて、燃焼条件が問題 であることが明らかにされたため、日本に於いても、 1997 年に「ダイオキシン対策特別措置法」が制定され、 2002 年 12 月からの完全施行により、 1997 年に総排出量の 90 % を占めていた焼却炉からのダイオキシン発生量は、 2002 年には 25 % に低下し、2003 年には 5 % 程度になりました。

しかも、2000 年度の日本人のダイオキシン摂取源のほとんどが食品経由で、 74 % が魚介類、13 % が肉・卵、5 % が乳・乳製品、 1 % が有色野菜で、 大気経由は 3 % 程度ですから、 実際には、塩ビも、焼却炉もダイオキシン問題には関係がなくて、 日本では、水田で使われた農薬に含まれるダイオキシンを魚介類を経由して、 人間が摂取することになりました。 西欧諸国では食習慣の違いで 70 % 程度が肉類からの摂取になるようですが、 総量としては、世界のどこでも大きな違いはないようです。

次に、添加剤による危険性については、 環境ホルモン作用の疑いがある物質として、 環境省が 1998 年に、 「環境ホルモン戦略計画 SPEED '98」にリストした物質のうち、 PVC の可塑剤として使われる、 フタル酸エステル8種とアジピン酸エステル1種については、 2003-06 に「これらの可塑剤は内分泌撹乱作用(環境ホルモン作用)がない」 との結論になりました。 その後の世界各国の研究でも、環境ホルモンの生殖機能への影響に関しては、 大きな問題がないという意見に集約され、 この分野で食べていた研究者も、 既に研究の重点を他の課題に移しています。

法規制の面では、本当に正しい選択かどうかはまだわからない、 RoHS 規制の対象になった鉛とその化合物については、 PVC の Pb 系安定剤が課題になりますが、 Ca-Zn 系安定剤への切替により、 「保証期間が終れば適当なタイミングで壊れてほしい」といった、 耐久性の要らない用途からは、排除されました。 つまり、 特性的には、従来から使われてきた、 鉛系安定剤が格段に優れていますので、 この切替えには、 かなりの製品寿命短縮と加工性悪化、難燃性低下といった犠牲が避けられず、 電力や土木、建築等、信頼性と耐久性が必要な分野では、 リサイクルとの組み合わせの上で、 鉛系安定剤が使われ続けると思います。

ダイオキシン問題、環境ホルモン問題を含む、 PVC の環境問題については、 広範な調査と研究が、 ヨーロッパやアメリカでも行われてきましたが、いずれも同じ結論で、 問題そのものが、データの捏造や思い違いであったことがはっきりして、 PVC の使用を規制している国はありません。 日本の大企業の担当者が簡単に引っかかったのが不思議ですが、 そうでないとしたら、便乗したわけで、何と言えば良いのか ..

一方、環境問題として極めて重要かつ緊急を要する、

  1. 枯渇資源の延命
  2. 省エネルギ
から見ると、PVC には、大きな利点があります。

まず、PVC は、その製造段階から製品製造段階までのライフサイクル評価で、 代替材料と比べて、CO2 の発生が大幅に少なくて、 例えば、日本で消費される PVC を 代替材料に置き換えた結果生じる CO2 を植林でカバーしようとすると、 東京都の 6 割と試算されています。

さらに、PVC はその組成中の炭素量が少ないため、 燃焼時に発生する CO2 も代替材料の 1/2 以下になります。

次に、PVC 成分の 6 割弱が塩素ですから、 枯渇資源である石油への依存度が 4 割強で、 代替材料の 100 % と比べて、枯渇資源の消費は 1/2 以下になります。

しかも、代替材料(つまり「エコ材」)のように、 将来のリスクがわからない、多量の難燃剤を練り込むことなしで、自己消化性を有し、 代替材料より安価で、耐久性と加工性が良いのです。

以上から、日本だけが突出している「非塩ビ」化が、 私たちの「環境」責任を果たす戦略であると言い切るのが極めて難しいと 考えざるをえません。 むしろ、「エコ電線」が環境破壊を加速する危険が大きいのです。 どうか、ご自分でも環境問題全般の勉強をしてみてください。 PVC は非常に優れた材料であることに気づかれるはずです。 「リスク評価と予防的配慮」

5. 環境問題の難しさ

PCB やフロン等、現在問題になっている化学物質のほとんどは、 使われ始めた当時、「夢の物質」でした。 代替物質の評価には、大きな犠牲と時間と労力が必要で、 しかも、環境問題はたくさんの要素が相互に関連していますから、 一部の要因に眼を奪われると、致命的な失敗をします。 例えば、マスコミが飛びつく「水素エネルギ」にしても、 出来上がった水素がどこかにあればよいのですが、 水素の製造と配送過程で必要なエネルギを考慮すると、 環境に有利かどうかは極めて微妙です。

また、環境汚染物質の評価も難しい仕事で、 例えば、コルボーン他の「奪われし未来」に登場する「ノニルフェノール」は、 これが主犯と判断したサンプター自身のその後の研究で、 人の尿に起因する女性ホルモンが主犯だったことがわかるとか、 断片的な情報に基づいた短絡的判断の危険がいたるところにあります。

多分、根本的な解決は、規制等による無用な無駄を減らし、 物的消費を落せる仕組みを作り上げるしかないと思います。 安全の名を借りた、バイクや自動車の昼間点灯は、 我々の子孫のエネルギを奪い取る犯罪ですし、 多量の使い捨て商品を「エコ商品」であるとか、 「環境にやさしい」と呼ぶのは無責任です。

CO2 問題については、IPCC の巧みな政治工作と、お役所・マスコミの政治的・無責任 な報道で、地球温暖化の原因のほとんどが CO2 であるという情報が根付いてしまいま したが、IPCC のホッケー・スティック曲線はダイオキシン問題の火付け役の1つとな った所沢市の新生児死亡率グラフと同じように、意図的な細工をしたことが climategate 事件として暴かれています。

温暖化と CO2 問題を自分自身で真面目に考えるのであれば、下記の著作をお読みにな ることをお薦めします。 クラウスの本だけでも、日本の政治家の知能レベルとのあまりの違いに ショックを受けるでしょうし、 スベンスマルクの仕事は気象学の長年の謎の1つである、雲の起源に肉薄したもので、 雲は無視できるという IPCC の言い分は日常の感覚とはあまりに違いますから、 思考力を失った IPCC 信者でなければ、世界観が変わると思います。

1) 経済学、政治、統計学から

  ヴァーツラフ・クラウス,- 環境主義は本当に正しいか?
	(日経BP社) ISBN978-4-8222-4798-0

2) IPCC の内部から

  スティーブン・モイシャー+トマス・フラー,- 地球温暖化スキャンダル
	(日本評論社) ISBN978-4-535-78652-3

3) 科学から

  H.スベンスマルク+N.コールダー,- 不機嫌な太陽
	(恒星社厚生閣) ISBN978-4-7699-1213-2

ロンボルグの著作(複数)はクラウスの著作から簡単にたどれると思います。

エネルギ問題を含めて、お役所とその周辺の無駄が極めて大きいにもかかわらず、一向 に手を付けないという「官僚聖域」の日本の体質も、なんとかしなければなりません。

いずれにしても、多くの人々がお役所、マスコミ、どこかの会社の広報の言うことを 真に受けず、自分で勉強して裏をとらないとだめです。赤坂の料亭やゴルフ場で、まと もな勉強ができるはずがありません。 科学的情報の精査以外でも、例えば、レイチェル・カーソンの著作を読んでみても、彼 女がマラリアで人口を減らすために、「Save the mosquito」と言うとも思えないので す。

6. 原料のリサイクル

社内で発生する廃プラスチック原料については、 宇部荏原方式のガス化プロセスによるケミカルリサイクルを含めて、 いくつかのリサイクル手法を試してきましたが、問題山積です。 ソルベイ社の「Vinyloop」プロセスを日本に持ち込もうとした、 (株)コベルコ・ビニループ・イーストも廃塩ビ原料の回収難で 2009-04-20 に倒産。 現状では、「日本の塵が中国の資源」という状況で、日本のリサイクル法はすべて破綻 してしまいました。中国の状況の変化に合わせて、次ぎの方向を考えるということで しょうか。

7. 当社の RoHS 対応製品の識別法

当社は日本でもかなり早い時期に RoHS 対応を始めましが、 10 年以上前の製品では、特性の良い鉛系安定剤が使われていますし、 鮮明な色が得られるカドミ系顔料も使われています。

カドミ系顔料に含まれる Cd が RoHS の閾値を上回ることは稀ですが、 鉛系安定剤は RoHS の閾値を越えます。

10 年以上前の製品等、古い在庫品で、 当社製品が RoHS 対応済みかどうかの判定が必要な場合は、 「DATE OF MANUFACTURE」(製造日)か 「LOT No.」(ロット番号)の 先頭が「N」で始まるかどうかを見てください。 「N06-18-05B65」とか「N0618565B」等、 「N」で始まれば RoHS 対応済みです。

当社製品のタグを紛失して、この確認ができない場合は、 当社の営業窓口に判定を必要とする製品を 1 m 程度お送りいただければ、 分析して結果をご報告します。