撚素線の断面形状とその応用 (2) - 密巻、密撚

整列巻きの理想としての密巻や素線間に隙間のない密撚のピッチを求めるには 撚素線の断面形状とその応用 (1) の「素線の隣接条件」

  (b1 + b2)^2 = a1^2 + a2^2 - 2*a1*a2*cos(t) + (k1^2 - 1)*(a2*sin(t))^2      (1)
  sin(t) = a1/a2/(k1^2 - 1)*(θ - t)                                        (2)
  ここに、
	b1 = 素線 1 の半径
	b2 = 素線 2 の半径
	a1 = 撚の中心軸から素線 1 の中心までの距離 (ピッチ円半径)
	a2 = 撚の中心軸から素線 2 の中心までの距離 (ピッチ円半径)
	θ = 撚の中心軸から見た、素線 1 の中心と素線 2 の中心の角度
	k = 撚込係数
を使うのが簡単です。

1. 密巻きピッチ

前記の隣接条件で

  θ = 2*π
  a1 = a2 = a
  b1 = b2 = b
の場合ですから、まず、
  b/a = sqrt(1 + (cos(t))^2*(k^2 - 1))*sin(t)
  sin(t) = (2*π - t)/(k^1 - 1)
から k を求めなければなりまsねんが、まず、k を消去した
  (b/a/sin(t))^2 = 1 + cos(t)/sin(t)*(π - t)
から2分法などの数値解法で t を求め、
  k = sqrt(2*(π - t)/sin(t) + 1)
  p = 2*π*a/sqrt(k^2 - 1)
  ここに、
	p = 巻き付けピッチ
でピッチを決定します。

この方法で、密巻きピッチを p として、 p/素線径 と a/b の関係を数値計算で求めると、下記のようになります。

                    < p/素線径 を a/b から求めるための表 >
a/b|    0      1      2      3      4      5      6      7      8      9
---+----------------------------------------------------------------------
   |        1.0572 1.0129 1.0057 1.0032 1.0020 1.0014 1.0010 1.0008 1.0006
10 | 1.0005 1.0004 1.0004 1.0003 1.0003 1.0002 1.0002 1.0002 1.0002 1.0001
20 | 1.0001 1.0001 1.0001 1.0001 1.0001 1.0001 1.0001 1.0001 1.0001 1.0001
30 | 1.0001 1.0001 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000

例えば、胴径 160 mm のドラムに 25 mm 径のケーブルを巻くとすれば、a/b = 7.4 だから p/d = 1.002 になって、巻き付けピッチとケーブル径の差は 2/1000 以下 になることがわかります。つまり、通常の巻取なら、 巻き付けピッチがケーブル径とを等しいと考えてもよいわけです。

接平面近似で、ケーブルの曲げと捻れを考慮しないときは、

  p * sin(a) = d  (密巻条件)
  sin(a) = sqrt(1 - 1 / k^2)
  ここに、
	p = ピッチ (m)
	d = ケーブル径 (m)
	  = 2*b
	a = 巻き付け角 .. ケーブル軸とドラム軸の角度 (rad)
	k = 撚込係数
	  = sqrt(1 - (π * D / p)^2))
	D = ケーブルの層心径 (m)
	  = (a + b) * 2
から
  p = d / sqrt(1 - 1 / k^2))                                     (6)
    = d / sqrt(1 - (d / π / D)^2))                              (7)
  p / d = 1 / sqrt(1 - (d / π / D)^2))                          (8)
となりますが、a/b > 1.2 なら、 曲げと捻れを考慮した計算との誤差は 1/1000 以下です。

2. 同一素線径の多芯密撚

この場合は、(1), (2) で

  a1 = a2
  b1 = b2
  θ = 2*π/n
  ここに、
	n = 導体数
ですから、
  b/a = sqrt(1 + (cos(t))^2*(k^2 - 1))*sin(t)
  sin(t) = (k^2 - 1)*(2*π/n - t)
が隣接条件で、まず、k を消去した
  (b/a/cos(t))^2 = 1 + cos(t)/sin(t)*(π/n - t)
から数値計算で t を求め
  k = sqrt(2*(π/n - t)/sin(t))+ 1)
  p = 2*π*a/sqrt(k^2 - 1)
で撚ピッチを求めることになります。

接平面近似で、素線の曲げと捻れを考慮しないときは、 同心撚層の芯となる円柱表面に接する平面上に同一径の素線を隣接させて並べた場合を 考えた下記の関係を使いますが、上記の結果に近い値が得られます。

  p = n * d * π * Dp / sqrt((π * Dp)^2 - (n * d)^2)
  ここに、
	d = 素線径
	  = 2*b
	n = 対象とする層の素線数	n = 
	Dp = 同芯撚層のピッチ円の直径 (撚素線の中心を通る円の直径)
	   = (a + b) * 2
	p = 同芯撚層の撚ピッチ

この場合も、a/b > 1.2 なら、 曲げと捻れを考慮した計算との誤差は 1/1000 以下です。

3. 異なる素線径の多芯撚

多芯撚の素線径が異なる場合は、(1), (2) 式を使って、 隣接素線間の素線中心の位置 (a, θ) を順次求め、 θの総和が 2*π になるような芯径を2分法などの数値解法で求めます。

4. x-y 断面形状

撚線ケーブルの軸方向断面形状は、(1), (2), (3) 式で z = 0 の場合で、下記のように なります。

  x = -b*cos(p)*cos(t) + b/k*sin(p)*sin(t) + a*cos(p)                    (1)
  y = -b*sin(p)*cos(t) - b/k*cos(p)*sin(t) + a*sin(p)                    (2)
  p = -b/a*(k - 1/k)*sin(t) + p0                                         (3)
撚込係数 k が小さい場合は楕円に近いのですが、 k が大きくなるに従って、楕円の両端を引き伸ばして撚中心に引き寄せた、 独特の形状になって、 ケーブル仕様書の模式図とは大きく違った断面になります。

なお、撚の中心から最も遠い素線表面で、x^2 + y^2 == a + b なので撚の外径は撚ピッ チに依存しません。 つまり、外径計算についてはケーブル断面の素線が真円だとして計算 した結果と一致します。

5. 後書き

電線工業に従事してすぐ、密巻きピッチはどうなるのかとか、 多芯撚の撚ピッチの最小値がどうなるかとか、 多心撚の外径は撚ピッチに依存しないのだろうかといった疑問を持ったのですが、 なかなか解析の手がかりが得られず、 素線表面を微分幾何学的に求めることができたのは、 20 年以上してからでした。 ここでは、整列巻きに関連する問題を中心に解説しています。

平林 浩一 (kh@mogami-wire.co.jp) 2009-06-10